【POINT:個人事業主は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が免除される】
今日は、以前勤めいていた会社の部長(現在はお客様)が、息子さんの相談で事務所に来られました。
息子が何やら商売を始めるって言い出して・・・
部長の息子さんって、大学生で国家試験の勉強してるって言ってませんでしたっけ?
部長もご苦労されているんですね。
息子から「商売を始めるんだけど、インボイスの登録は必要なの?」と聞かれてね。
正直、私にはその辺がよく分からないから、あんず先生に聞きに来たんだよ。
部長、いつも大変お世話になっております。
息子さんが商売を始めるとのことですが、どんな商売か具体的に教えて頂けませんか?
個人向けのネット通販って言っていました。
そんな時間があるなら勉強して欲しいんですが・・・。
ご自分で事業を始めるって素晴らしいことだと思います。
でも、部長のお気持ちも分かります。
今回は、”事業を始めるにあたってインボイスの登録は必要か”、というご質問ですね。
はい、とりあえず息子に聞かれたので。
(小声:まりさん、部長って息子さんに甘くないですか・・・?)
(小声:部長は優しいからね。)
結論から言うと、現段階では息子さんはインボイス登録をする必要はないです。
えっ、そうなんですか!?
開業1年目と2年目は、原則として消費税の納税義務はありません。
ただし、インボイス発行事業者として登録すると、その時点で課税事業者となるため、開業1年目であっても消費税の納税義務が生じます。
本来、開業したばかりの事業者は基準期間の売上が無いため、原則として免税事業者になります。
ところが、インボイス発行事業者として登録すると、自ら『消費税を納める課税事業者になります』と選択したことになるんです。
そのため、免税事業者になれるはずの開業1年目であっても、登録をした時点で課税事業者となり、消費税を納める義務が発生します。
インボイス制度は、取引先(主に事業者)が消費税の計算をする際の「仕入税額控除」に必要となる仕組みです。
そのため、息子さんの商売が事業者向けではなく、主に一般消費者向けであれば、インボイス登録の必要性は高くないでしょう。
なるほど。誰に向けて商売をするのか、ということが大切なんですね。
ところで、『開業1年目と2年目は、原則として消費税の納税義務がない』というのを、もう少し詳しく教えていただけますか?
消費税の納税義務は、原則として基準期間の課税売上高によって判定します。
基準期間とは、個人事業者であれば前々年、法人であれば前々事業年度をいいます。
前々年または前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務は免除されます。
そのため、開業・設立1年目(1期目)は、基準期間となる売上が存在しないため、原則として消費税の納税義務はありません。
ただし、例外があるので注意が必要です。
法人の場合、設立時の資本金(または出資金)が1,000万円以上あれば、設立1期目から消費税の納税義務が生じます。
また、個人事業主・法人ともに、開業・設立1期目の前半6ヶ月(特定期間)において、課税売上高が1,000万円を超え、かつ給与等支払額が1,000万円を超える場合は、原則として2年目(2期目)から消費税の納税義務が生じます。
なるほど。
息子の場合は個人事業主ですし、主な取引先が一般消費者であれば、インボイス登録をしない限り、インボイスを理由に課税事業者になることはないという理解でよいでしょうか。
また、個人事業主なので、法人のような「資本金1,000万円以上」という基準も関係ありませんよね。
そうすると、消費税については、原則として基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者になるということですね。
ただ、2年目については、特定期間(開業1年目の前半6か月)の売上や給与の状況によっては課税事業者になる可能性がある、という理解で合っていますか。
息子の場合は売上規模もそれほど大きくないと思うので、開業1年目・2年目は消費税の納税義務がない可能性が高そうですね。
部長、理解力凄いですね!
先生、消費税ってお客様から預かった消費税を、事業者が国へ納める間接税ですよね?
消費税の納税義務がない場合、お客様から受け取った消費税相当額はどうなるんですか?
まりさん、いいところに気付いたわね。
消費税はお客様からの“預り金”として説明されることが多いけど、預り金ではないという議論もあるの。
ここでは、分かりやすく説明するために、消費税を預かっているものとして話すわね。
免税事業者が、税抜10,000円のサービスを提供したとしましょう。仕入れはないものとすると、お客様から受け取る金額は税込11,000円、消費税は1,000円になるわね。
免税事業者は消費税の納税義務がないので、受け取った11,000円をそのまま事業収入として受け取ることになるの。
国に納めなくても問題ないんですか?
ええ。
免税事業者である以上、消費税を納める義務はないから、法律上まったく問題ないわ。
ただし、『消費税を預かっているのに納めていない』という仕組みではなく、そもそも免税事業者には納税義務が課されていない、と理解するのが正確ね。
消費税は制度が複雑だから、実際の判断に迷ったときは、税理士などの専門家に相談することをおすすめするわ。
まとめ
・基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務はない。
・ただし、法人の場合は設立時の資本金(または出資金)が1,000万円以上であれば、設立1期目から消費税の納税義務が生じる。
・また、特定期間(原則として事業年度開始後最初の6か月間)の課税売上高および給与等支払額が1,000万円を超える場合は、翌課税期間から消費税の納税義務者となる。